『ひかりさす』トーク・レポート 39th A Program

登壇者
木口健太 [俳優] 斉藤陽一郎 [俳優] 根矢涼香[俳優]
司会:大内靖 [映画監督]
高崎映画祭にて上映決定
第38回高崎映画祭「まちと映画」という企画の基調上映として『ひかりさす』が上映されます。同時にトークイベントも開催。大内靖監督始め、何人かのゲストが予定されています。
上映日時:3月28日(金)17:00~18:20 @高崎芸術劇場
桜川市の四季折々の美しい風景を、柔らかなタッチのイラストで表現した観光ポスター「桜川の四季」を基に公募された短編小説「ひかりさす」が原作となった本作。上映後のゲストトークでは、大内靖監督が進行、主演の木口健太さん、斉藤陽一郎さん、根矢涼香さんをお招きし、貴重なお話を伺いました。観光PRの側面は持ちながらも、他の自治体が作る映像には無いストーリー性や映像美を、どのように作っていったのか。地元への思いや、方言に関する話など、20分という短編作品だからこその表現の可能性を読み解く時間となりました。
※トークの模様から抜粋してお届けします。(以下、敬称略)

大内:木口さんは桜川市出身ということで、とても馴染みのある場所だったと思うんですが、斉藤さんと根矢さんはいかがでしたか?
根矢:私は茨城町の出身です。桜川市はあまり行ったことは無かったですが、今回本当に好きな場所になりました。撮影後も家族で足を運んだり、イベントに参加させてもらったりとかもして。住んでるとあまりわざわざ行かない場所もあると思うんですけど、これから他の場所にも足を延ばしたいなって思ったし、もっと地元のことも掘ったらまた違う魅力が出るのかなと再確認できた機会でした。
斉藤:私は札幌市出身で元々縁はないんですけど、妻の実家が古河市というのがあって、子供が生まれたタイミングで、古河の方に引っ越してきまして。それであまや座さんに映画を観に行った時に、館主でもある監督の大内さんと出会って。その後交流みたいなものがあった中で、今回お話しいただいてやることになったんですけど。茨城弁どうでした?大丈夫でしたか?(会場から大きな拍手)あっ、本当ですか?ちょっと今無理やり拍手させた感じですけども(笑)。
根矢:大丈夫でしたよ。細かいところまで。現場で苦労されていたのを見てたんですけど、普通に聞けちゃってます。本当にバッチリだったと思います。
大内:私が茨城県出身じゃないので、茨城弁が分からないというか(大内監督は埼玉県深谷市出身)。ですので、現場では方言指導の方にも来ていただいて。失礼いたしました(笑)。
斉藤:なんだぁ。分からないでオッケー出してたってわけですか(笑)。やっぱ音ってね、難しいですよね、なんか。でも今日皆さんに拍手して頂けたので、少し安心してこれから紹介できるなと思ったりしています。
大内:木口さんはいろんな作品観ている中で素敵な俳優さんだったのと、なんと桜川出身ということで繋がったんですけども、今回参加していかがでしたでしょうか?

木口:そうですね。本当の父親と歩いたことがある場所で撮影して…不思議な感覚っていうのもあるし。自分の出身地の方言とかすごい劇中で話したいって思いも前からあって。今回お話いただいて「よっしゃ」と思ったら、私の役はめちゃめちゃ標準語で(笑)。だから最後の「父さん」のとこだけちょっと訛ってもいいですか?って何テイクかやってたけど、多分一番訛ってないテイク使われてました(笑)。いやでも、私は事前に観てて、今日も観て、なんでか分かんないけど、とある場所からずっと泣いちゃうんですよね。何か観てて何なんだろう。音楽なのか…。多分自分の記憶とかもリンクするんですよね。ちっちゃい頃連れててもらった場所とかそういうのが。誰に感情移入してるわけでもないのにっていうのが。
斉藤:劇中で、僕の(父親の)台詞であったけども、やっぱりずっと繋がってきた時間というか、歴史みたいな、そういう何かこう脈々と受け継がれている時間みたいなものがこの映画の中に映ってたんじゃないかなと。そういうことが成功しているといいなと思いながら。

大内:原作もそうですけど、それがすごく肝だなという風には感じていて。原作ではずっとバスでお話をしてるんですけど、そのセリフは何かバスとは切り離して、別のところで話してもらった方が、観ている人にも伝わるんじゃないかなと思って、居酒屋のシーンとか、街の中を歩くシーンに変えてみたんですけど。なので、木口さんのように、なんでだろう?って感じてくださったならありがたいですね。
斉藤:根矢さんもね、泣いちゃったって。
根矢:泣いちゃうんです。何か私は多分、茨城弁で進んでいく映画がもっとあっていいなって思ってたのもあるから、馴染みがある分、何か浸透率が高かったのかな。ちょっと照れくさく言ったりとか、「飲み過ぎたみたいだな」ってセリフすごい好きなんですけど、なんか誤魔化しちゃう可愛さみたいなのも。私は何か茨城県民っぽさ、良い意味で何かそういうのも相まって。あと風景もそうだし、そこに住んでる人達の思いの全部がそれぞれ主役なんだよっていう書き方だから、多分自分に馴染みがない場所だとしても、こう自分の物語として見れるようになってるのかなと思って。あと、白黒なのもすごく生きてたと思います。人の言葉と顔だけにめちゃくちゃ集中できるので、そこがフラットになった分、自分の記憶を掘り出しやすかったのかな。すごいちょっと小説を読んでる時のような感覚で進んでいったので、そこが不思議ですよね。泣きました。さっきも鼻水すすってました。
大内:根矢さんは今回出演シーンは短かったんですけど、撮影期間は写真も撮っていただきました。

根矢:普段お芝居の仕事もしたり、写真だけの仕事をすることがあるんですけど。自分が関わってないところのお二人のお芝居を、レンズを通して見れるっていうのは、自分が作っていく上ですごくプラスの部分もありますし。でも普通に二人の表情に惹かれながら撮っていました。バスの車内での光、光の差し具合が本当に素晴らしくて、タイトルの通りになっていたんです。でも実際あのシーンも結構ギリギリだったじゃないですか。1日の終わりになってしまって日が落ちてしまうから、何か色々な奇跡が重なったのかなって。私はレンズ越しに見てました。すごい綺麗だった。
大内:最後に一言お願いします。
根矢:本日は本当にありがとうございました。大内さんの監督作品に出られたことが嬉しかったですし、こうやって茨城にゆかりのある方々と共演することができたのも凄く特別な作品になってます。桜川市も大好きになりました。あと、今 Netflixで配信が始まった「極悪女王」という女子プロレスの作品に出演しています。デビル雅美さんを演じさせていただきました。ぜひ観てください!
斉藤:大内さんとの縁でこういうふうに作品ができたのは本当に嬉しいですし、来たかった水戸映画祭にも呼んでいただけたのは本当に今日嬉しかったです。物語はありましたけども、やっぱり主役は街だったりもします。桜川市が本当にいい街だったので、ぜひ足を運んでいただけたらと思います。ありがとうございました。
木口:地元に関わるというか……やっぱり遠く離れたからこそいい部分って見えてきて、何かそういうのを茨城全体で考えて、何か貢献したいってずっと思ってます。それと同時に水戸映画祭がもっともっと盛り上がって欲しいし、僕も何かまた別の作品で来れたりできたらいいなと思います。
大内:歴史ある水戸映画祭で上映をさせていただきましてありがとうございます。大きなスクリーンでの上映は今日が最初で最後かなと思うんですが、桜川市のホームページやYouTubeで観れるようになりますので、ぜひいろんな方にお声かけいただいて、桜川市に遊びに行っていただけたら、この作品の本望です。本日はありがとうございました。

本作は、桜川市のYouTubeからご視聴頂けます。
構成・文:大内靖 写真:神山靖弘