『Winny』トーク・レポート|第38回 Cプログラム
登壇者
東出昌大[俳優] 松本優作[映画監督]
聞き手:寺門義典
水戸の映画祭、ということで水戸にゆかりのある人・物・場所の映画を上映することも、本映画祭の在り方のひとつと考えています。今回は、作品の主人公でもある金子勇さんが茨城大学・大学院のご出身ということから『Winny』の上映に決まりました。ゲストには、本作監督の松本優作さん、そして、金子勇役を演じた東出昌大さんをお迎えし、お話を伺いました。
※トークの模様から抜粋してお届けします。
実は、打ち合わせの際に、松本監督が以前、水戸短編映像祭に出品していたことが判明。東出さんも、高校の剣道の試合で水戸に来たことがあったとのことで、お二人とも意外なところで茨城・水戸と接点があることが判明しました。
Winnyとはなにかを調べることからスタートした監督。取材の過程にて、劇中にも登場する、金子さんを知る一人である壇弁護士との出会いが大きな一歩になったとのこと。7年近くかかった裁判を全て描くことが難しいなか、大事なことは無罪を勝ち取ったということもあるが、そもそも、なぜ強引な形で有罪になってしまったのか、そこを描きたいと思ったそうです。脚本は、撮影を兼任した岸健太朗さんと松本監督との共同執筆という珍しいものになっています。
東出さんは、金子さんの役が自身のところにきた時の印象について聞かれると「Winny事件については知らず、資料を読んだ限りは、金子さんがどういう意図でWinnyを作ったが分からず迷いもあったが、生前の金子さんを知る人にたくさん取材をする中で、みんな金子さんのことが好きで、みんなが『天才だった!』と言っていた。また高校や大学時代の金子さんを神童たらしめたエピソードをたくさん聴く中で、純真無垢な金子さんが見えて、この人になろうと思い、役作りをした」とお話していただきました。
また、実在の人物を演じることについては、金子さんは動画や資料がたくさんあり、やりがいがあった一方、そこに注力しすぎて形態模写が上手くなっても、映画的に魅力的になれなければ元も子もない、と、本作での一例として吹越満さん演じる秋田弁護士のお話をしてくださいました。
松本監督も実話をもとにした作品の演出について『事実を混ぜながら、いかに映画としておもしろく見てもらうかを考えながら作っていった』と、再現した部分と想像した部分を具体的なシーンを交えながらお話ししてくださいました。
短い時間ではありましたが、満員のお客様の中、本作について、また演じることについて濃密なトークが繰り広げられました。東出さん、松本監督、また水戸に遊びに来てくださいね!
写真:神山靖弘 文・構成:天貝みずき