『スウィング・キッズ』トーク・レポート|第38回 Aプログラム
登壇者
金 玄徳(キン・ヒョンド)[茨城朝鮮初中高級学校 教務主任]
聞き手:山田タポシ
公開当時に劇場に足を運び、鑑賞したスタッフが、そのダイナミックな音楽と表現に圧倒され、この映画を見た人と語りたい!と思っていた作品です。あまや座さんでも上映していましたが、コロナ禍直後の公開のため、全国的にも盛り上がるタイミングを失ってしまった作品です。
※トークの模様から抜粋してお届けします。
今回、映画祭が通常開催に戻ったタイミングで、再度本作を届けたい、しかも、水戸芸術館ACM劇場のステージは木材なので、タップダンスのシーンももしかしたら劇場より臨場感たっぷりに味わってもらえるのではないかと考え、上映作品に決まりました。水戸には、朝鮮学校があるということを好機と捉え、ゲストには茨城朝鮮初中高級学校 教務主任で、自身も映画が好きという金玄徳さんをお迎えし、お話を伺いました。
自身のお名前の由来も映画、という金さん。朝鮮大学校で朝鮮現代史を専攻していたということから、トークは、本作の舞台である、朝鮮半島、朝鮮戦争についての歴史的背景を伺いながらスタート。「なぜ捕虜収容所が巨済島になったのか」についてもお話しくださいました。
映画冒頭でも、セピアの記録映像の形で当時の朝鮮の情勢、捕虜収容所の様子を写した映像が流れますが、この背景に疎いと、その状況を理解しようとするうちに本編が進んでいくため、トークで改めてお話を聞けると理解も深められたかと思います。
監督のインタビューや実際の状況から、当時まだ存在していなかったデヴィッド・ボウイの ♫”Modern Love”でタップをするシーンなどファンタジーの要素もありつつ、基本的には、記録写真や歴史的背景をもとに練られた脚本であろうというお話もありました。
また、金さんは北の言葉も、南の言葉も分かるということで、言葉の話題、そして料理や衣装などの文化の話に。
北の方言だと、茨城弁のように語尾が上がるようで、実際の単語で実演もしてくださいました。ただ、北朝鮮でも、韓国との境界線に近い南側になると、韓国に近い訛りになるため、平壌よりも南のほうの言葉の方がわかりやすいと思う人もいるそうです。
最後に、金さんから見た、ロ・ギス、ジャクソンたちの関係について、どういうことを想像されたかを伺ったところ「ロ・ギスは純粋にタップダンスに惚れてしまった。でも南のようになんでも自由ではないという難しさがよく描かれた映画だ」と仰っていました。
金さん自身も、学校では学校外からの講師を招いて授業をしてもらうという取り組みなど、朝鮮学校と地域を繋いでいく活動を続けています。その外部講師として縁があった映画祭スタッフがきっかけで、今回のトークが実現しました。
地域との繋がりを拡げて多様な話題を身近なものとして、映画を通じて感じてもらうことも地域映画祭の役割のひとつではないかと常々考えています。Aプログラムは、そのような意味でも有意義な上映とトークになったのではないかと思います。
写真:神山靖弘 文・構成:天貝みずき