第37回水戸映画祭 Aプログラム『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』プレミア上映

第37回水戸映画祭 目の見えない白鳥さん、アートを見にいく トークイベント 登壇ゲスト 白鳥建ニ 川内有緒 三好大輔 ナビゲーター 森山純子

登壇者

白鳥建ニ[全盲の美術鑑賞者]

三好大輔[映画監督/プロデューサー]

川内有緒[ノンフィクション作家]

ナビゲーター:森山純子[水戸芸術館現代美術センター]

川内有緒さんの著書『目の見えない白鳥さんと アートを見にいく』(集英社インターナショナル/2021年)はもちろん拝読、興味深すぎてほぼ一気読みしていた映画祭スタッフ。水戸在住の白鳥さんには何度かマッサージしてもらったことがありますし、水戸芸術館現代美術ギャラリーで2010年から白鳥さんがナビゲーターをつとめる『視覚に障害のある人との鑑賞ツアー「session!」』も初期に参加していました。短編『白い鳥』が「キネマ旬報」の文化映画部門に入選していたことも、情報としては知っていました。それまでも十分アメイジングなことだと思っていましたが、まだまだ序の口でした。水戸芸術館現代美術センターの森山さんより、なんと今度は全盲の美術鑑賞者、白鳥建二さんの日々を追った長編ドキュメンタリーが制作されており、上映場所を検討している、という話をいただきました。白鳥さんの映画をぜひ「水戸映画祭」で上映させてもらいたい!そうして、今年のプログラムがひとつ動きはじめました。

第37回水戸映画祭 目の見えない白鳥さん、アートを見にいく トークイベント 登壇ゲスト 白鳥建ニ 川内有緒 三好大輔 ナビゲーター 森山純子

※上映後トークの模様から一部抜粋してお届けします。(以下、敬称略)

森山:本日は皆さまお越し頂きありがとうございます。今日がこの映画のワールドプレミアということで、まずは映画の完成と上映おめでとうございます!
(会場から拍手)
白鳥さんも私も今日初めてスクリーンで拝見しました。
この映画ができる前に、川内有緒さんの、映画とほぼ同名に近いタイトルの書籍『目の見えない白鳥さんと アートを見にいく』(集英社インターナショナル)が出ています。そもそも白鳥さんと川内さんの出会いはいつでしたか?

白鳥:2019年の1月ですね。川内さんの本に詳しく書いてありますが、マイティ(佐藤麻衣子さん)と3人で、三菱一号館美術館で待ち合わせしました。

森山:マイティ=佐藤麻衣子さんは以前水戸芸術館で働いていて、川内さんとも20年来の友人ということでその繋がりで出会ったんですよね。

第37回水戸映画祭 目の見えない白鳥さん、アートを見にいく トークイベント 登壇ゲスト 白鳥建ニナビゲーター 森山純子

川内:マイティから、白鳥さんと一緒に作品を観ると、本当に面白いんだよ〜と誘われて。行ってみたら、お⁉これは何だろう?って。美術館に行く前と行った後の自分の感覚の変化に驚いたというか。目の見えない人と一緒にアート鑑賞なんてしたことなかったですし、私にとってはとてもドラマティックな1日になったんです。それからあちこちの美術館に一緒に行くようになりました。

森山:白鳥さんが初めて水戸芸術館にいらしてから、何とかれこれ四半世紀経つんですよ。はじめは一来館者として来ていて、水戸を気に入って引越していらして、水戸芸術館で『視覚に障害のある人との鑑賞ツアー「session!」』がはじまりました。その後、佐藤さんの繋がりで川内さんと出会い、本が出版されました。川内さんと出会って本が出来てからの広がりが凄いですよね。今度はとうとう自分の映画ができた。白鳥さん、どういうお気持ちですか?

※書籍は、2022年本屋大賞 ノンフィクション本大賞 ノミネート、ほかにTVやラジオなど多くのメディアで取り上げられている。

白鳥:ぼくは自分の映画という意識はあまりなくて、まぁ、作ってもらった、という気持ちです。やはり恥ずかしいですよね。三好さんや川内さんが編集途中で、このシーンがいいんだよね〜って言ったシーンが、俺が酔っ払ってるシーンだったりして……(一同笑) 川内さんはこの笑顔がすごくいいんだよね、って言ってくれたんですけど。

川内:そこはやっぱり白鳥さんのB面も盛り込みたいなぁと(笑)

第37回水戸映画祭 目の見えない白鳥さん、アートを見にいく トークイベント 登壇ゲスト 白鳥建ニ 川内有緒 三好大輔

森山:白鳥さん、奥様との出会いも酔っていて記憶がないんですよね?
以前水戸芸術館の近くにあった「ブラックバード」というレストランで、”白鳥マラソン”という、ご自身が撮った写真のスライド上映イベント兼飲み会を開催したときが出会いですよね。

白鳥:そのときは自分の持っているもの一旦全て出してみようと。こんなこともしてます~という気楽なものです。写真のスライド上映をしつつ朝8時から飲んでいて、会ったのは夜9時らしいので、もうその時間は酔っていて覚えてないです(笑)

森山:三好さんがこの作品に関わられたのはいつ頃からですか?

三好:2020年8月に『夢の家』(「大地の芸術祭」会場にあるマリーナ・アブラモヴィッチの作品)での撮影に同行したところからですね。
はじめは川内さんから「ちょっと5分くらい、白鳥さんと鑑賞しているところを撮影してくれない?」という気軽な感じで声がかかって行ったところ、次々と作品を鑑賞していくので、どう撮ればいいのかはじめは追いかけることに必死でした。ただ、2日目の朝に白鳥さんをクローズアップで撮っていて、ああ、白鳥さんをそのまま撮ればいいし、じぶんの撮りたいように撮っていいんだなと気が付きました。

第37回水戸映画祭 目の見えない白鳥さん、アートを見にいく トークイベント 登壇ゲスト 三好大輔

森山:その朝のシーンは、早朝のまだ仄暗い静かな空間に白鳥さんが一人で座っていて、周りの会話が遠くに聞こえているという……名シーンですね。

川内:ちょっと5分くらいでいいよ、という話だったのですが、三好さんはほどなく集中してずーっとカメラをまわしていて、そんなに撮って映画にでもする~?って。

森山:もともと川内さんは小さい頃に映画監督になりたいという夢があったそうですね。

川内:はい、子供のころからずっと映画をつくっていて、日本大学芸術学部に行きました。そこで三好さんとも知り合いました。

森山:大学卒業後、国連にお勤めになり、ノンフィクション作家になり、とうとう念願の映画監督になられた。2021年1月に中編『白い鳥』が完成してすぐ、長編を作りたい、という話になったということですが、どちらが言い出されたのでしょうか。

川内:私です! この作品はぜひ劇場公開したいなぁと、そのためには長編にするしかない!と。長編にするには追撮が必要だったんですが、そうしたらちょうどマイティから、白鳥さんが今度『はじまりの美術館』で写真の展示するよ!と連絡があって。そこで撮影をすることになり……その日はいろんなことが一気に進む奇跡のような1日でした。これはもう特急列車に乗ってしまったなと(笑)

三好:『はじまりの美術館』では撮影をしながら引っ越しの手伝いをしたり、白鳥さんが暮らしているハナレに滞在させてもらいながら、朝4時まで飲んだりしてましたね。

森山:川内さんの本が出来てから、白鳥さんご自身もずいぶん変化がありましたよね?

白鳥:はい、あちこちの美術館から声がかかって鑑賞会や人前で話す機会が増えています。いただいたお金で旅に出て、最近は四国のほうにも足を延ばしました。

森山:『はじまりの美術館』の展示もありましたし、アーティストと協働制作もしていますよね。資生堂ギャラリーでアーティストユニットの「目[mé]」と一緒に制作したり、水戸芸術館でも「ヂョン・ヨンドゥ」展の際に、ヨンドゥさんからデジカメを託されて6万枚くらい送ったんですよね。これまでどのくらい写真を撮られているのでしょう?

白鳥:この前数えたら、これまで44万枚くらい撮っていました。ぼくはシャッターを押すことで完結しちゃっているんです。

第37回水戸映画祭 目の見えない白鳥さん、アートを見にいく トークイベント 登壇ゲスト 白鳥建ニ

森山:以前マッサージ室を開設していた際は、自宅からマッサージ室までの道のりを毎日のように撮っていましたよね。まるでロードムービーのように。それも今後、もしかしたら失われていく水戸の景色が収められたすごい記録になるかもしれないですね。

白鳥:「写真家」と名乗るのは自分としてはちょっと違うかなと思っているのですが、日常で白杖を操作するのと同じように、写真を撮っています。これからも撮っていくと思います。

三好:白鳥さん、最近は「写ルンです」も使っていますよね。あちこち白鳥さんとご一緒していると、お互い撮り合いになったりして面白いですよ。ご縁で全盲の方の友人ができて、稀有な経験をさせてもらっていると思っています。

川内:ほんとうに、ここまで一人の人を追いかけて濃厚な時間を過ごすという経験はなかなかないなと。一人の人を知る深み、知っていくプロセスの面白さを実感しています。

森山:そうですね。わたしも、白鳥さんと出会って四半世紀、「session!」は10年以上一緒にやってきましたけれど、お互いよく知っているようで、今でも知らないことがほとんどな気がします。白鳥さんも私たちも日々変化していきますし。そのなかで、その時その場を楽しんでいく、一期一会の積み重ねが今とこれからを作っていくのでしょうね。

川内:白鳥さんと知り合って、あれ?「障がい」ってなんだろう?って。驚くことが本当に多いです。

森山:わかります。白鳥さんは常識を超えてくるアウトロー的存在かと。決して視覚障がい者代表というわけではなくて、白鳥さん独自の道を歩んでこられている、ということは、わたしも「session!」参加者に毎回お伝えしているところです。

白鳥:まぁぼくは社交辞令とか建前とかはあまりなくて、いつもざっくばらんに言いたいことを言っているだけです。

森山:それが楽しさの秘訣かもしれないですね。さて、この映画の今後は?

三好:はい、本作は来春2023年3月から劇場公開予定です。その前に、那須、鳥取などで先行上映もあります。
また、この作品は自主配給をしておりまして、配給にかかる費用のクラウドファンディングも実施しています。多くの方に届けられますよう、ご興味ありましたら是非ページをチェックしていただけるとありがたいです。


◎今後の上映予定(2022年10月21日現在)

■先行上映
2022年11月6日 那須「まるっとみんなで映画祭」
2022年11月27日 鳥取県立博物館「フクシ×アートWEEKs 2022」
2022年12月15日、18日「東京ドキュメンタリー映画祭」

■劇場公開
2023年3月〜
東京都写真美術館ホール(東京)
元町映画館(神戸)
上田映劇(長野県上田市)
フォーラム福島(福島市)
フォーラム山形(山形市)ほか

◎今後の水戸芸術館現代美術センターでの白鳥さん関連プログラム

■2022年12月11日、18日「中﨑透 フィクション・トラベラー」関連企画
『視覚に障害のある人との鑑賞ツアー「session!」特別編』

■2023年3月25日 「ケアリング/マザーフッド(仮)」関連企画
読後会:『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』

会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー ワークショップ室
ナビゲーター:青山ゆみこ(文筆・編集)
ゲスト:川内有緒(作家) 白鳥建二(全盲の美術鑑賞者)
※詳細、申込方法等は2023年1月に水戸芸術館ホームページで公開

当日プログラム詳細

(写真:神山 靖弘 構成:藤 美奈子)


2022年11月08日 | Posted in Talk Report | | Comments Closed