日本映画が好き2021

日本映画が好き2021

日本映画が好き 2021 35mmフィルム上映 2021年度優秀映画鑑賞推進事業国立映画アーカイブ

世界の映画史に大書される巨匠の小津安二郎監督が親と子の関係を静かに見つめた、戦後の代表作を上映

2021年10月9日(土)10:15~ 『彼岸花ひがんばな』〜小津作品初のカラー映画〜 料金:500円

Dancing Films

1958年/カラー/スタンダード/118分
監督・脚本:小津安二郎
出演:佐分利信 田中絹代 有馬稲子 桑野みゆき 久我美子 笠智衆 ほか

娘が勝手に決めてきた結婚相手に腹を立てる頑固な父親の姿をユーモラスに描く、小津安二郎監督初めてのカラー作品。小津監督の言によれば、父がなじみにしている京都の旅館の娘役として大映から招いた看板女優、山本富士子を活かした明るい映画にしたいという会社の方針もあって、色彩映画に手をつけたそうである。 小道具や着物ひとつひとつに気を配り、赤が映えるアグファ・カラーをネガフィルムに用いて、色をはぶき、色があって色がないような、つまりは「色即是空、空即是色」の心持ちで撮影に臨んだと語っている。ドラマチックな展開を極力排除し、さりげない会話のやりとりの中に人間のエゴを垣間みせるこの監督特有の手法が、あでやかな色彩とともに、見るものの心に染み込んでくる。母娘を演じた浪花千栄子と山本富士子による京都弁の掛け合いもまた愉しい。里見弴は小津監督の 敬愛する小説家で、原作は小津監督の映画化を予定して書き下ろされたものである。「キネマ旬報」ベストテン第3位。

2021年10月10日(日)10:15~ 『秋刀魚さんまの味』~小津安二郎監督の遺作~ 料金:500円

秋刀魚の味

1962年/カラー/スタンダード/113分
監督・脚本:小津安二郎

出演:岩下志麻 笠智衆 佐田啓二 岡田茉莉子 三上真一郎 中村伸郎 ほか

この作品の構想を練っていた1962年2月、生涯独身であった小津は生活を共にしていた最愛の母を失った。その数日前、小津は映画人で初めての芸術院会員となり、喜びを分かち合ったばかりであった。戦後、小津の復活を知らしめた『晩春』(1949、笠智衆・原節子主演)以来、初老の父と独身の娘の関係がこの作品でも踏襲されている。身の周りの世話を娘に頼り、娘の行く末を考えもせずにいた父が、旧制中学時代の恩師と中年の娘がしがないラーメン屋を営んでいる光景を目にし、人生の孤独を感じつつ娘を嫁がせるのだった。恩師の娘を演じた杉村春子は、演技指導の厳しかった小津ですら何も注文をつけなかったといわれているが、無言の立ち居振る舞いはこの作品のテーマを見事に表現している。これまでになく人生の無惨さを描いたこの作品の翌年、小津は端正な作風そのままに、還暦を迎えた12月12日、亡き母のもとへ旅立った。「キネマ旬報」ベストテン第8位。

主催:水戸市優秀映画鑑賞推進事業実行委員会/公益財団法人 水戸市芸術振興財団/国立映画アーカイブ
特別協力:文化庁/(社)日本映画製作者連盟/全国興行生活衛生同業組合連合会


2021年09月04日 | Posted in 日本映画が好き, 第36回水戸映画祭[2021], 関連企画 | | Comments Closed